研磨工程の概略、研ぎ見所--->Part 2 -研ぎの見方

●鋩子
 鋩子は刀のチャームポイントとともいえる部分です。鋩子の研ぎの善し悪しでかなり刀の品位が変わってきます。 ところが、一番研磨が難しい部分でもあります。多分0.0?oを意識的に削る世界なのではないでしょうか。
 小鎬の曲線はフクラの曲線と調和をとり、横手は棟のラインに直角か若干棟側が先に向かって高くなるようにします。三ツ頭や横手は有るか無いかわからない位の微妙な角をつけるのが理想です。(左図) 角が全くないと愚鈍な感じがします。かといって角のつけすぎはもっと良くありません。
 角をつけすぎると(a)図のようになってしまいます。一見めりはりがあるように見えるし、研ぐ側としても安直に横手と三つ頭が決まり平肉の所も形を整えやすいので楽です。しかし、刃も薄くなり貧相ですし、刃も欠けやすくなります。それに、この場合フクラが直線にならないと形が理屈に合いません。

 (b)図のような小鎬の曲線に自然になるように平肉がついているべきです。
 チェックポイントの所は削り過ぎてムラになりやすい箇所です。
 鋩子を棟の方から見たのが左図です。小鎬の先から切先にかけては(c)が理想型です。(d)は削り過ぎ、(e)は更に小鎬の長さが裏表違うという、とんでもない状態です。
 まさかここまでひどい物は少ないだろうと思うでしょうが、実際は小鎬の先の位置が表裏そろっている物の方が少ないです。2o位違っていても平気で流通しています。

●さて問題です。左図の(b)と(f)ではどちらの方が形が整っているでしょうか?(かっこいいでしょうか?)

私は(b)の方だと思います。しかし・・・
 じつは先の方の平肉の曲面が横手の所の曲面と同じ比率でカーブするには、横手の長さと小鎬の先から刃先までの長さが同じでなければならなりません。そうすると左図を見てわかるように(f)の方が理想型になる。(b)は先に行くにしたがいカーブが緩くなることになります。
 だからといって(b)が悪いとは思いません。実際に目で見て均整がとれているように感じるならば、たとえ錯覚によるものだとしてもこちらを尊重すべきかとも思います。私個人としては(f)の方が好きですが・・・。皆さんはどう思いますか?
 当工房では鋩子を研ぐとき強引に形を直すようなことをいたしません。元の形を尊重し整形は小鎬の長さや形を整えながら表裏同じにし、平肉を綺麗にします。平肉が薄くても錆がひどい場合以外は切っ先を下げて膨らみをつけたりはいたしません。(a)の形はそのままということになります。      

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