研磨工程の概略、研ぎ見所--->Part 1 研磨の概略 |
刀剣研磨にかかる手間を知って頂くための大まかな説明です。もっと詳しい内容を知りたい方は「日本刀職人識談」光芸出版やその他の書籍を参照下さい。尚、工程の名称は便宜上独自に考えたものです。見積日数は約2尺の物と仮定しており、研磨料金、納得度を考慮したものです。時間をかけだしたらきりがありません。実際は刀の硬度、状態により研磨時間に違いが出てきます。 |
砥石の種類 | コメント |
金剛約#200 | 深めの錆や、大きく形を直すのに使います。 |
備水 約#400〜#600 | 錆を落としたり、形を整える。 |
改正名倉 約#800〜#1000 | 備水の砥石目を消す。薄錆を取る。微妙な整形。 |
中名倉 | 改正名倉の砥石目を消す。薄錆も取れる場合が有る。 |
細名倉 | 中名倉の砥石目を取る。肌をならす。 |
内曇刃砥 | 刃の部分を研ぎ刃紋や働き、刃の肌を出す。 |
内曇地砥 | 地、鎬地の部分を研ぎ肌模様を出す。 |
刃艶 | 内曇砥を薄くし和紙に張り付けた砥石。 |
地艶 | 鳴滝砥を薄くし和紙に張り付けたり、そのまま砕いて使う。 |
1、整形 金剛又は備水砥石にて鎬地、棟、地、鋩子の順で形を整えてゆきます。この時大事なのは砥石にあたる刀の面の角度が一定に保っていることを「手が決まる」というのですがこれがいい加減だと刀がムラだらけになったり、角が丸くなったりしてしまいます。 そして、削る量が多いため何処を削るべきか否かを的確に判断しないと刀に重大なダメージを与えてしまうため非常に慎重に行わなければならない重要な工程です。 錆を取る場合はこの工程では若干残す位の気持ちで行います。時々窓開けで削りすぎたものを見ますが、多分金剛で錆を取りすぎてるのかと思います。 金剛から始めるか、備水から始めるかは刀の状態、硬さにより判断します。 この工程にかかる日数は約2日〜3日です。 2、整形小 改正名倉砥石にて備水の砥石目を消しつつ細かなムラを消してゆきます。そして刃を切れないレベルのぎりぎりまでつけておきます。ここで刃の部分を削りすぎると反りに添った曲線が多角形になります。時々非常に綺麗な多角形(5から6個位)のものを見ますが腕の良い研師の方の安研ぎではないかと思われます。 錆はこの段階で殆ど取ります。 この工程は約1日です。この工程後もう一度備水に戻ったりするともう少しかかります。 大きなムラは荒い砥石で取らないと綺麗になりません。細かい砥石ででも何度も繰り返せば同じ量を削れるのですが、小さなムラが残ったりラインに鋭さがなかったりします。そのような理由で改正後に備水に戻ったりすることが有ります。 3、下地準備 改正名倉砥の砥石目を中名倉砥、細名倉砥の順で消してゆきます。刀の形は殆ど変わりませんが薄錆ぐらいなら中名倉で取れます。今、刀の形は殆ど変わらないと書きましたが、鎬がきちんと角張ってないと鎬筋に対し直角に砥石を当てるはめになり接地面積が少ない関係上圧力が高くなり、目の細かい砥石でも鎬が更に丸くなってしまいます。いい加減な形の刀は仕上げ研ぎといえども刀に対しかなりダメージを与えることが有ります。逆に元の形が良いとどんどん良くなります。この工程にかかる日数は約1日〜2日です。 4、下地仕上げ 内曇砥石という一番細かい砥石を使います。柔らかい物は刃用、固い物は地用です。まず刃砥で刃の部分を肌が出るまで研ぎます。この時、錵、匂等の刃紋を形づくるものや金筋等の働き、隠れていた刃切れ等のキズまでも現れてきます。そして、この段階で始めて刃がつき物が切れるようになります。 地砥では地の肌が出るまで研ぎます。荒れた鉄肌は抑えるようにして目立たないようにしたりもします。 この工程にかかる日数は約1日〜2日です。 5、仕上げ 刃艶、地艶、という内曇砥や鳴滝砥を薄く小さくした砥石を手に持って刀を磨くようなつもりで擦ります。刃艶は内曇砥の砥石目を消したり、ならしたりします。地艶は地に艶や潤いを出し、肌も鮮明になってきます。この段階でもかなり見栄えが良くなり刀の良さが表に出てきます。(私はこの状態がけっこう好きです。) この工程は約1日です。 6、化粧 拭いをさす-色々な成分の粉末を油に溶いだ研磨剤を使い、刀を磨きます。これにより地を青黒くしたり潤いを調整したり光りを強くしたりします。これによりかなり刀の趣が変わってきます。 磨き-非常に固い先の尖った金属の棒で鎬地、棟を磨きます。 刃取り-刃紋に添って刃取艶にて白くしてゆきます。 ナルメ-鋩子を仕上げます。 この工程は約2日です。刃取りなどはまともにやると何日もかかり研磨料金が高くなるので工夫により日数を短縮しています。 ●全工程にかかる時間は合計すると約10日前後ということになります。 |