研磨工程の概略、研ぎ見所---> 地 |
チェックポイント一 <曲面の流れ> 左図のように地の肉付きがハバキ元から切先にかけて同じ比率であることが理想と言われてます。 しかし、古い物はよほど健全でない限りこうは行きません。極端なムラがなく、元から先まで滑らかな曲面が続いており、感覚的に綺麗であれば良いでしょう。 むしろ、実際には、かなり健全であっても量感的な感覚による錯覚のせいか、単純な比率にこだわり過ぎると余計変な感じになる場合があるようです。どうも重ねや鎬地の幅、姿に関連しているのかもしれません。 |
チェックポイント二 <凹凸・削りムラ> 刀をすかして見ると極端に凹んで見苦しくなっているものがあります。錆を部分的に取りすぎた場合このようになります。このような刀を直す方法は、凹みの前後を僅かに取ると目立たなくなる場合が有りますが、削り過ぎたムラは残ります。(全体を削っちまうという手もありますがキズや芯鉄がでる可能性がありますので、勇気がいります。) 刃寄りにムラが有り左図のように刃が蛇行したものもあります。これは若干身幅が狭くなりますが焼き刃が無くならない限り直すべきだと思います。(但し、古い貴重な刀はこれには及びません。) |
チェックポイント三 <段々畑状態> 左図のように地が段々になり刃と鎬の曲線が多角形になっているものをよく見ます。荒い砥石に刀を筋交いに当て無造作に研ぐとこうなります。(筋交いに当てても丁寧に研げばこうはなりません。) このような刀は見苦しいだけでなく平肉も落ちております。 時々ほれぼれするように綺麗な節がついている刀がありまして、熟練の研師さんの安研ぎ(早研ぎ?)なのではと思われるものもあります。余談ですが、戦争中、軍刀にするための刀を研ぐ納期が非常に短かったらしいので、その分も多数含まれているのかもしれません。 (^o^)/このようなパターンは以外に多いんです。一見きれいに見えるのでご用心。 |
チェックポイント四 <肉付き> (A)は名称の説明の為に書きました。ここまで平肉がついてるのはめったに無いです。イメージ的に刀を見ていて感じる量は、これぐらいが適当かと思います。今回、図を描いていて思ったのですが、平肉の量の感覚的なイメージと実際では誤差が有ることに気づきました。極端な言い方をすると1oあると思ってたものが実は、計ると0.1oだったというようなことです。(もしかしたら研師の職業病かな?) 具体的に言うと(B)のような断面が理想の形です。(C)は平肉が全く無い状態です。それらを重ね合わせたのが(D)です。図を見て分かるように、実物よりも大きいにも関わらず、ほんの少しの違いしか有りません。正直いって驚いてます。 長い前置きはこれぐらいにして上図の説明を行います。(刃肉の詳細は刃の部) (B)-実際はこの程度しか平肉は付いてません。重ねもさらに薄いものがほとんどです。綺麗な凸面レンズのようになっているのが理想です。 (C)-全く平肉の無い状態。大変良く切れます。鉄質にもよりますが刃が欠けやすくなります。衝撃にたいする強度は平肉が少し有るのと無いのとでは大違いです。 (E)-鎬を立てようと意識するあまり鎬下を削り過ぎてます。(よく見ます。ここまで酷くないですが、私も一時この間違いをやってました。仕上げた時、鎬下がうっすらと白くなるので分かります。) (F)-地と刃の硬度差の為、地だけ削り過ぎて変に刃肉がついたように見えるもの。 (G)-表と裏の平肉の付き方が違うもの。このような刀は削りムラも多いです。 |