研磨工程の概略、研ぎ見所--->鎬地、鎬 

キーワード
★表裏対象
★平
★角が立つ
★ムラの処理
概論
 鎬地は刀全体の土台ですので、表裏の幅が同じで、あくまで平らに、かつ刀をハバキ元からすかして見たときに凸凹が有ってはなりません。凹凸が有ると地の方にも凹凸が発生し、全体が澄んだ形となりません。しかし長い年月を経た刀は凹凸が有る物が多いので、出来るだけ目立たないようにします。何度か研ぎに出しているうちに平らになるような方向性を意識した研磨が求められます。(平らになるのは何十年、何百年後でしょうが、削っているうちに芯鉄が出てくるかもしれません。)
 表裏の幅が同じでない刀も案外多く見られますが、直ります。
 鎬は明瞭な角がたち、刀をすかして見たときに綺麗な曲線になってなければなりません。

 左図(A)は鎬地を斜めに削った例です。このまま鎬を綺麗な曲線にしようとすると(B)のように地も削らなければならなくなり、これがムラの原因となります。逆に地に深錆が有って削った時にも鎬地を削り鎬線を綺麗にしたりする場合もあります。つまり深錆が発生した刀は全体を削らない限りムラは必ず発生するということになります。古い刀はたいていムラがあります。このムラを出来るだけ目立たなくするのが研師の技術と言えます。

鎬地の種類

鎬地がほぼ平行

 表裏の鎬地が平行に近くなっており、現代刀に多くみられます。
刀をすかして見るとハバキ元から切っ先まで水平で、機械砥石による鍛冶研ぎが可能なことが原因の一つと考えられます。
 鎬が鈍角な為鎬下の地が削り過ぎに注意が必要になります。(鎬をくっきりさせるためですが、良くありません。地のコーナー参照。)
鎬地そのものの研磨は割と楽です。
 平行と書きましたが、殆どの刀は少しだけ棟厚が鎬の厚さよりやや狭いようです。
鎬 高し

棟側よりも鎬の方が厚みが有ります。左図のようにやや高い形が尤もオーソドックスな形と言えるかもしれません。物を斬ったときに抵抗が少ないので切れ味も良いそうです。
刀をすかして見ると直刀以外はハバキ元から切っ先までカーブしている道路のように僅かに湾曲しており水平ではありません。表裏の鎬地の角度が元から先まで一定にしたりムラなく研ぐのは難しいです。おそらく機械でこの形を作るのは困難かと思います。
鎬 低し(※勝手に名前をつけました)

鎬より棟側の方が厚みが有ります。本来有ってはならない形ですが、希に存在します。直すべきか、そのままにしておくべきかは賛否両論でしょうけど、うちでは依頼されない限り直しません。多分、刀を素手で触らない限り、見ただけでは判らないでしょうから。
鎬 丸し(※勝手に名前をつけました)

鎬がボケ鎬地が丸くなってます。これも本来有ってはならない形ですが、このような刀は程度の差こそあれ多く見受けられます。一度こうなってしまうと、目の細かい砥石のみの研ぎでも、鎬の砥石目を消すために角を砥石に当てるので、さらに丸くなります。このような刀は一度荒い砥石で整形する必要があります。
鎬地を鏡を見るように覗き込むと目が潰れて写るのですぐに分かります。
一度ご自分の愛刀を覗きこんで確かめてみてください。左図ほど酷くはないにしても棟や鎬の近くが怪しいという方は少なくないかと思います。

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