【研ぎのよしあしを知るには始めに地むらのあるなしを知るべし、あしきは必ずむらあり。】
上図のように刀をすかして見ると古い刀はたいがい程度の差はありますが凹凸があります。これを「地むら」と言います。
「あしきは必ずむらあり」と言ってますがかならずしも全てが悪いわけでなく仕方ないものもあります。部分的な錆を取れば当然その部分だけ少し凹みます。その周囲を広範囲に研ぎ上げれば凹凸を無くせますが古い刀などは新しい傷が出る可能性があるし、地にも薄い焼きが入っているので削ることによって肌合いが変わる可能性もあります。古い刀の見苦しくない程度の「地むら」は仕方ないと思います。
悪い「地むら」は研ぎ職人の明らかな不手際が原因で出来た凹凸です。研ぎ技術の未熟が原因となるものや、技術はあるのに乱暴な研ぎ方をしているもの、あるいは無気力になんとなく研ぎ上げてしまって出来た「地むら」があります。
新しく使用していない刀の面に凹凸がある場合は悪い研ぎで出来たものです。古い刀でもある程度は仕方ないのですが不自然な凹凸は不適切な研ぎによって出来た「地むら」の可能性があります。
他に不適切な曲がり直しによる「地むら」があります。曲がっているポイントから少しズレて直したものなどは曲がったところが凹んでおり、裏側は膨らんでいます。刀の曲がりは急角度にカクっと曲がっているものや緩やかなアールを描いて曲がるものなど刀の性質によってまちまちなので曲がりを直すのは大変な技術が必要です。素人の方が直したものはほとんどが蛇行するはめになります。酷いものは曲がり直しの為の曲げが原因で刀身の弾力無くなり板バネが鉛の板に変わってしまったかのような刀もあります。
そして、曲がり直しで出来た凹凸を削って直そうとして更に複雑な凹凸を作ってしまった困った刀などもあります。