刀剣研磨-研究室--->3、私の愛刀

データ (?はそのうち計ります)
長さ:54p 反り:? 元幅:? 
擦上げ 無銘 多分末古刀
三原系かな?

刃紋
完全匂い出来の中直刃。刃中に働き無し。匂い口締まり気味、光強し。ハバキ元上20p位から下の方へ徐々に焼き幅が狭くなる。(たぶん刃を削っており、昔は踏ん張りがあったかも。)

地肌
ギザギザした小木目で梨地ぎみ。物打ちから切っ先にかけて光の弱いチケイ多数有り。
鎬から刃先に向かい雲のような映りがあり、鎬地にも掃いたような映りがある。
軽い焼きが棟全体に入っている。
<刀を見ていて思った疑問の数々>←錆身を買うときの参考になるかも

一、買ったときの状態
 地肌は完全無地鉄、何カ所か薄錆びが有り、書いたような刃紋、キズのように見える砥石目が多数有り、ふっくらとしてない貧弱な地肌ばかりがやたら目出つ刀でした。値段も頷けるもので、まあ拵え代と思えば損は無いかな?という感じです。
 しかし、刀をすかして棟を見ると芯がビシっと通っており、鎬地も若干丸くなっているが致命的なムラが無く一皮むけば完璧な形になるような感じでした。普通研ぎ減りして貧弱な感じの古い刀はよく使っているので必ず歪みがあるはずなのに、現代刀並に真っ直ぐというアンバランスが不思議でなりません。
 考えられることは、元々細身だったということ。完全に錆びてた物を幕末位の人が完璧にリペアし、昭和位にいい加減な研ぎを誰かがしたのでは? の二つがあります。
磨り上げなのでなんとも言えないが、茎の厚みと刀身の厚みがほぼ同じなので多分前者かな。どちらにしろ、前々回この刀を研いだ人は相当の腕前なのは間違いありません。

二、映り
 この刀の魅力は肌のように見える映りです。しかし、自分が持っている本にはこのような映りのことを書いておりません。映りというと殆どが棒映りか波紋と相関関係がありそうな模様のものです。ところがこの刀の映りはコーヒーにクリームを垂らした時にできる模様のように人為的な感じがしません。ならば肌模様にあわせた映りかというと、良く詰んだ小木目ということもあり肌がはっきりしないせいか、よくわかりません。たしかに肌と相関関係にある映りも存在しますが、上図の煙突からでる煙のような妙な形の映りも存在します。あと通常のものはどうか分かりませんが、この映りは光にかざすと白くなり逆光で見ると黒くなります。
 本には映りというと柔らかい組織になっているようなことを書いているものが多いが、この刀の場合、固い組織のように感じます。古い波平を見たときは、確かに焼刃が固く徐々に棟に向かい層をなして柔らかくなっていくような感じで作っており、柔らかい部分が映りとなっております。 まあ、固い柔いは何らかの方法で計れば良いわけで将来の研究課題です。
 今の段階での個人的な仮説ですが、焼きの入りやすい鉄と入りにくい鉄を組み合わせて鍛錬したときの模様がそのまま映りとなって肌のように現れているのではないかと思っております。

三、形状
 写真を見ても分かるように長くしたら古い太刀姿になってしまうような形です。試しに古青江の正恒の押し形(レプリカ-日本レジン2000年カレンダー)に乗せてみたら同じ形でした。刀そのものは古青江と比べること事態おこがましい感じなのですが、ダラ〜と棟全体が焼けていたり、少し光の強い完全匂い出来という造りから考えると簡単に新しい物と想像出来、姿と時代が違ってきます。多分、末古刀期の刀匠が先祖の太刀を写し、ハバキ元が土落ちやキズがあり誰かが大磨り上げしたのではないかと勝手に想像している次第であります。
質素だが上品な拵え
 
 上記のようなことを考えながら、今も毎日10分位この刀を眺めるのが日課みたいになってます。刀に対する美術的な観賞というものを未だに理解出来てない自分ではありますが、刀には明らかに何らかのパワーと魅力があることは確かなようです。

おまけ-(師匠直伝の錆身の選び方を二つ紹介)
 「上手な磨り上げをしてるものを選べ」←私には、いまいち分かりません。
 「上手な研ぎをしているものを選べ」←これは分かります。 
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