刀剣研磨-研究室--->7、古刀と現代刀
古刀と現代刀では研いだ感触がかなり違います。錆やすさ、錆方も違います。 どちらが良いとか悪いとかを考えずに、研いだときに感じる単純な違いを比べてみます。。刀は個体差があるので全てが下記にはあてはまりませんが、だいたいの傾向として書いてみました。 |
項目 | 解説 |
地の感触 | ・現代刀 ;硬い / ・古刀 ;軟らかい ●どれぐらい違うのか? 現代刀を天然の粗砥や備水砥で研ごうとしてもツルツル滑ってしまいます。それに比べ古刀は砥石がキチンとかかります。昔は天然の砥石しか無いので当然といえば当然なのですが、刃物は研いで使う物という基本原則にのっとり、昔の刀工は地鉄を意識して軟らかくしてあるのかも知れません。 少しオーバーなイメージですが現代刀はガラス的で古刀は粘土のような感じです。実際、古刀を研いでると金属でない違う素材のような感覚になる時があります。 ●軟らかい現代刀について 現代刀にも軟らかいものが有りますが、古刀に比べヌルっとした粘りが感じられません。現代刀はどのような感触かというと、単純に軟らかいものや、あり得ないことですが鉄に蝋(ロウ)を混ぜて鍛えたような感触のものもありました。 ●不思議なこと 現代刀は硬いにもかかわらず鉄の表面にキラキラと光の強い底の非常に浅いヒケがつきやすいようなきがします。←光が強いので単に目立っているだけかもしれません。 ●その他 古刀に比べ現代刀はざらついた感があります。 |
肌の感じ | ・現代刀 ;チケイ等が少ない、キズ少ない、変化に乏しい、梨地風 ・古刀 ;無傷は少ない、変化に富んでいる ●細名倉レベルで肌が出てしまう! 古刀は細名倉砥石で研いでいる段階から硬い鉄と軟らかい鉄による肌模様が見えてくる時がありますが、現代刀では、まだ見たことがありません。 古刀の方が硬軟の鉄をよく(適当に?)練り合わせ軟らかい地肌にもかかわらず、折れたり曲がったりしないような工夫をしていたのかもしれません。 梨時風の肌でも現代刀と古刀では全く違います。 ●肌は何故現れるのか? 現代刀の肌は鍛えた時の合わせ目にある不純物等により鍛え目が肌となって見えてるような感じですが、古刀の場合鍛え目の他に鉄の硬軟の違いによる肌もあります。オマケに鍛え目に異質な鉄が寄る場合も多いらしく肌がより明瞭となるみたいです。 |
錆について | ・現代刀 ;錆びやすい / ・古刀 ;錆びにくい ●どれぐらい違うか? 刀を研ぐ時、錆びない為に苛性ソーダを桶の水にいれるのですが、古刀は大さじ半分以下で大丈夫なのに、現代刀は一杯以上必要なものがあります。←個体差はありますが平均すると、こんなもんです。 ●錆方の違い? 古刀は肌の鍛え目から錆びる場合が多いですが、現代刀はどこからでも錆びます。現代刀の錆方の特徴として丸い点錆が縦に深くなりますが、古刀は余程のことがない限り錆が縦に深く入ることは少ないようです。余程のこととは、土に埋まったとか、変な接着剤で張り合わせた鞘にいれているとか等です。 !偽物の判別に錆びを見るのも一つの方法です。 |
刃 | ・現代刀、古刀、共に千差万別 ●一般的に軟らかい刃は古刀に多く見られますが、個体差が多いです。 性能的にも千差万別で現代刀も古刀も関係ないように思われます。 ただ強烈に印象に残っているのは南北朝時期の作と思われる無銘の刀でした。青みがかっており、サクッとしたバリの出にくい刃です。(刃味については次回のテーマ) |
◎ よく思うのですが、古刀と現代刀はあまりにも違いすぎます。伝統的な材料と造り方でないと作刀は認められてませんが、ここまで違うと伝統とは何なのか疑問です。 ならば、いっそ安来鋼の白紙、青紙や刃物用ステンレスなど現代だからこそ安価に手に入る素材を組み合わせて使いアニメのルパン3世に出てくる斬鉄剣のような最強の刀を目指したほうが、古の刀鍛冶の精神に近いのではと思う今日この頃です。 ★★現代刀匠様へ★★ 刃物は研いで使うというのが原則だと思いますので、せめて天然の砥石がかかる硬さの刀を造って頂くことを切に願います。現代刀は正直言って硬すぎるものが多いと思います。 エッ!新刀の場合はどうかって? →確かに硬くて研ぐのが大変な刀が存在します。天然の砥石しか無い当時の研師の方は今以上に苦労したことと思います。どうやら平和になると使うことが少なくなり刃物の原則が忘れ去られるのかもしれません。 |
上記の内容は、あくまで研いでいる時に感じていることなので、あくまで感覚的で曖昧な内容です。 硬さ、錆安さ、粘り等が実際にどれぐらい違うのかを、いろんな方法で比較実験してみたいと常々考えております。 錆びて折れている刀とは呼べないような、廃棄する以外どうしようもない刀をお持ちで、ご提供くださる方がございましたら下のメールアドレスまでご連絡おねがいいたします。実験の結果は随時ホームページで発表いたします。 |