刀剣研磨-研究室--->19、刃先のメンテナンス

 素人の方でもできる抜刀用の刀のメンテナンスについて書いてみようと思います。

○切れ味の耐久性について
 メンテナンスの仕方を書く前に、研磨後にどれぐらい物を斬ったら刀が切れなくなるかを検証する必要があると思い6月から天気の良い日に畳表1畳巻きを一日に2〜4本斬っておりました。
 いまのところ50本を斬り一本につき20回は刃を入れるので1000回刃をいれた勘定になります。刀は切れ味が判りやすい1尺4寸の脇差しを使い、片手で斬りました。
 その結果、感覚的なものですが下記のグラフのような感じがしました。
 研磨直後の切れ味は素晴らしく良いのですが、最初の100回から200回位までにみるみる切れ味が落ち、それ以降の切れ味はなかなか落ちないということです。
 もちろん刀の性質や刃肉の付き方によって個体差はあると思うのですが、基本的に同じような切れ味の落ち方をすると思います。
では、いつになったら切れなくなるのかということになるのですが、
 6月に鈴鹿のMASAさんの試し斬り会に行ったときに、ほんの少し刃引きしている刀(新聞紙が切れないレベル)で畳表を斬っている方がおり、その刀を借りて自分も試したら見事に切れました。
正直言って驚きました。
 この事から考えると、一度研いだら何もしなくても畳巻きならば永久に切れると言っても過言ではないことになります。ただし、切れ味はだんだん重くなってきます。
素人の方が研ぐと左図のようにする場合があるのですが、このようにすると何もしないより切れ味が落ちるうえに刀の消耗も大きくなります。このことからも一般の方がメンテナンスをする場合は慎重を要します。
 結論として、一般の方による刃先のメンテナンスは不要ということになります。刃が欠けた時や、1〜3年に一回くらい定期的に研ぎに出すで良いと思います。経済的に余裕のある方は、もっと頻繁に研ぎに出して頂いてもかまわないし、こちらとしてもありがたいです。m(_ _)m
 当方では、こちらで研いだ後になにもせず消耗もあまり激しくない場合は20000円で研磨しますが、自分で研いで上図のようにした場合の研賃は30000円〜となり少し高くなります。
 
○刃先のメンテナンス方法 【2022年追記、↓これは行うべきではありません。】
 一般の方のメンテナンスは行わないほうが良いと書きましたが、試し切り回数の多い方や、できるだけ良い切れ味の状態で刀を使いたいのでどうしてもメンテナンスしたいという方は以下の方法で行う事をお薦めいたします。
 まず上図のように板に持つところを取り付け、1500番か2000番の耐水ペーパーを両面テープで貼り付けます。
 ペーパーに水をつけて写真のように肘を軸にして手首を固定し刀の上を滑らせます。このときのコツとして、下図のように地刃全体を磨く感じで、地のほうから少しずつ刃先のほうにずらすように行います。刃先だけを研ごうとするとどうしても刃先が丸まってしまい切れ味が落ちてしまいます。
ヤスリのほうの角度を変えるのではなく、刀を動かして角度を変え地のほうから少しずつ刃のほうにヤスリの当たるところを移動するようにします。
 このようにメンテナンスを行うと正規の研ぎと違い刃が黒く地が白くなります。切れ味は当方で研磨した直後の状態にはなりませんが、その半分くらいの切れ味には復活いたします。あと薄錆びも取ることができます。
 くれぐれも刃先を丸めないようにお願いいたしますいたします。
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