刀剣研磨-研究室--->4、錯覚について

 研ぎを考えるうえで目の錯覚という問題を避けて通ることが出来ません。
まず、左図を見て下さい。

 一度は見たことがあると思いますが、縦線と横線の長さが同じなのに、何故か縦線の方が長く見えます。
 なぜこのような錯覚がおきるのかをあれこれ考えてみました。そして得た結論は、脳が左図のように目に見えない三角形を無意識のうちに認識し、面積的なバランスを優先してしまうということが考えられます。
 正三角形の場合、同じに見えるはずです。
 どうですか?

縦線と横線が同じ長さに見えますよね。もちろん縦線が短いです。

これがなぜ研ぎに関係するかは次ぎです。


 研ぎの見方(鋩子)のところで触れましたが、左図のように小鎬の長さを調整するときなど錯覚を頭に入れておかないといけない場合があります。

 理論的には(f)の方が良いはずなのに(b)の方が錯覚を意識しないで見るとバランスがとれて見えてしまいます。実物だと上記の面積のバランスのみならず、体積のバランスも関係してきます。

 ここまで書くと色々な問題が発生することに気づくことと思います。
・錯覚とは誰もが同じに感じる物なのか?
・錯覚を無視してしまう目を持った人には違う感じに見えるのではないか?
・本来はどうすべきなのか?
・他にも錯覚の原因になる要素は無いのか?
・A君とB君では一つの物が同じ形、色に見えるのか?
・・・・。
ここまでくると頭がパニックになってしまいます。
そんなわけで刀を研ぐときは、出来るだけ元の形を想像し復元するような気持ちでやってます。
新身の刀は作者の好みに合わせるべきでしょう。もし作者と連絡がとれない時はどうするか?(ほとんどの場合そうですが)
 最終手段として自分の美的感覚に頼るしかありません。さてどうしたらよいものやら?
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